気象予報士になっても「天気予報」はできないってどういうこと?

自己紹介で「自分は気象予報士です」と言うと、「気象予報士だから、一人で天気予報できるんでしょ?」と言われることがたびたびあります。
しかし実は、気象予報士試験に合格して、気象予報士に登録しただけでは、まだ天気予報の業務を行うことはできないのです。

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気象予報士の登録とは別に予報業務の届け出が必要

気象予報士の予報業務については、気象業務法上で定められています。まず事業者として登録された企業や団体に所属していることが必要で、その上でこの事業者が気象庁長官に「予報業務を行う気象予報士の氏名」を届け出ることが必要なのです。
届け出は事後申請でも良いのですが、いつまでも届け出が行われなければ、たとえ気象予報士であっても予報を広く伝えることができないのです。

たとえ気象予報士であっても、気象庁や民間気象会社とまったく異なる予報を繰り返し行って予報を外してばかりだと、気象予報士全体の信頼性が落ちてしまいます。それを防ぐ上でも、天気予報を業務として行う場合は届け出が必要なのです。

予報ではなく「予想」

自分は現時点では予報業務が認められた団体に所属していないため、独自の「予報」はできず、気象庁や民間気象会社の予報を元に「解説」を行うことしかできません。
また、未来の天気について語るときには、実は注意深く「予報」という言葉は使わず「予想」という言葉を使っています。これも気象業務法を遵守していることを明確にするためなのです。

ちなみに、気象庁に予報業務の届け出を行う際は、予報の「目的と範囲」を明記する必要があります。
例えば、関東地方の天気を予報すると届け出を行った場合は、その他の地方、例えば関西地方の天気を独自に予報することはできません。
範囲を変更する場合は、事業者はその都度気象庁に変更を申請する必要があります。これは気象予報士試験でも良く問われるポイントだったりします。

「予報」という言葉には、このように細かい決まりごとがいくつも含まれているのです。

さいごに

一般の方にとっては、「予報」だろうが「予想」だろうが、この先の天気が当たってくれればどちらでも良いと思うでしょう。ですが気象予報士としては、両者は全く異なるものなのです。

今後大手を振って独自の天気予報ができるようになるまでは、この「予想という名の天気解説」というスタイルを継続していきたいと思っています。

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プロフィール

気象予報士。ほぼ独学で第55回気象予報士試験に合格。新潟県上越市出身。川崎フロンターレのサポーターで、全国各地へのサッカー観戦やご当地グルメの食べ歩き、温泉めぐりが趣味(現在自粛中)。好きな季節は春、好きな雲は積雲。SEから気象に関する仕事への転職に向けて準備中。

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