気象予報士試験 合格までの軌跡(2/4)…1回目の受験、第54回試験(前編)

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2020年6月初旬:コロナ禍で勉強再開、そして受験を決意

月日は流れて2020年初夏、世間が新型コロナによる影響で自宅での生活を余儀なくされる中、自分もまたステイホームでの過ごし方に苦慮していました。

時間はあるのに何をしてよいか分からず暇を持て余しているときに、2年前と同じ書店で、「イラスト図解 よくわかる気象学 専門知識編」を発見。あの「イラスト図解」の、学科専門分野を網羅する続編が発売されたのか…と嬉しくなって手に取って読んでいくうちに、2年前にやっていた気象予報士の勉強を思い出し、さっそく購入。6月の初め頃でした。

「イラスト図解」の専門知識編は、前編と同様に各項目の導入部にマンガがあって親しみやすく、また学科専門のテキストで内容がまとまっている本がほとんどなかっただけに、短期間でこの範囲の知識を効率的に得ることができました。当時は販売されてから1年以内で、記載されている情報が新しかったのも良かったですね。また学科専門の試験範囲の情報は、気象庁ホームページで無料で見れるものも多く、本とサイトを併用することで、より理解が深まりました。

正直に言うと、この時期は自分自身の不調と新型コロナによる先の見えない状況によって、気持ちが落ち込むことも多かったです。ですがこの本を買ってから2週間かけて一通り読み終えた頃には、「自分でももしかしたら気象予報士試験に合格できるのではないか」という希望的観測と根拠のない自信が、ふつふつと心の奥底で湧いてきたことを感じました。

調べてみると、新型コロナによる影響で第54回の試験の申し込みは7月にずれ込んだため、まだ間に合うことが判明。短期決戦ながら、ここで本格的に試験勉強を開始することを決意しました。

その後6月中旬に、2年前に読んでいた「イラスト図解」の学科一般編も再読。忘れていたことも多かったものの、一度通して読んでいたので内容を思い出すのも早く、1週間ほどで最初から最後まで読み通しました。

6月下旬:「一般気象学」への無謀な挑戦

「イラスト図解」の2冊を読み終えた時点で、試験本番まで残り2ヶ月。他の人と同じペースで同じような勉強をやっていてもダメだと思い、ここで気象予報士試験のバイブルとも謳われる「一般気象学」を購入し、自力で読破するという無茶な行動に打って出ました。

「一般気象学」は、著者の小倉先生がそもそも気象予報士試験の創設に携わっていて、学科一般分野の元ネタとなっている本。読めば確実に試験に有利になるものの、レビューを見ると難しいとかとっつきにくいなどと書かれていて、読む前は戦々恐々でした。

ですがいざ腹をくくって読んでみると、理系学部の1~2年生向けに書かれた教科書ということで、理系学部卒の自分でも時間をかければ自力で読み進められる部分も多そうな印象。実際に「可能な限り内容を理解しようと努力はするけれど、どうしても分からなかったら諦めて先に進む」という読み方で、理解度は高くないものの、まがりなりにも最後まで読み通すことができ、自分の中で大きな自信に繋がりました。

「一般気象学」は、論文から引用されたグラフや図がめちゃくちゃ多いのが特徴。他の気象予報士試験の参考書とは説得力が段違いで、未だに一般気象学の図を引用して記載している本が多いのも頷けます。また式の導出が「イラスト図解」よりも無理がなくて、理系の自分にとっては納得できる点も多かったです。

もっとも、最初に一般気象学から読み始めていたら、確実に挫折していたでしょうね…。普通の受験生の方は、無理して最初から通して読もうとせず、興味のある部分だけをピックアップして読むか、過去問を解いていて分からない部分が出てきたときにこの本を事典代わりに使うのが良いと思います。

それでも、本気で気象予報士を目指していて、資格取得後も気象予報士として活躍したい方は、是非とも購入して折に触れて読んで欲しい一冊です。図表を眺めているだけでもためになりますから。

6月末:実技分野にも着手、多様なメディアをフル活用

「一般気象学」と平行して、6月末からは、いよいよ実技分野にも着手。実技向けに購入した本は「らくらく突破 気象予報士かんたん合格テキスト 実技編」。国際式天気記号や高層天気図の見方、作図や速度計算といった新たな知識を学ぶとともに、気象予報士試験の論述問題特有の用語や言い回しもこの本で会得。ここに来てまた更に覚えることがあるのか…と頭を抱えつつも、慣れるにはとにかく時間が掛かっても全ての問題を解いて、正答と照らし合わせて解説を理解するしかないと覚悟を決めました。

実技に着手するまでは、本を読むだけで自分の手を動かすことはなかったのですが、実技の問題を解くにあたって、頭の中でなんとなく考えてなんとなく組み立てていたはずの解答も、いざ紙に解答を書いてみると、適切な文言がなかなか出てこなくて表現に四苦八苦する羽目に。ここに来て、「気象予報士試験は国語の試験」と言われる理由を痛感させられました。

また、高層天気図の読み方を解説した本が少ないことも悩みのタネのひとつ。地上天気図の見方や書き方を解説した本はたくさん出ているのに…。そうは言っても高層天気図に慣れないといけないので、高層天気図を毎日更新しているHBCや気象庁のサイトから、フリーソフトを使って定期的に自動でPCにダウンロードする仕組みを構築して、日頃から高層天気図に慣れ親しむ機会を増やしました。

もう一つ、実技対策の一貫として、Team SabotenのYouTubeチャンネルで公開している、「拝啓、予報官X様」シリーズの動画の視聴も開始。この動画は、気象庁から毎日2回発表される「短期予報解説資料」の中から、特徴的な天気の事例について解説を行うもので、試験に出そうな典型的な事例もあればより複雑な事例もあって、まさに実践的。

当然最初は理解するのも難しかったのですが、実際に生じた現象を気象学の基本から丁寧に説明していて、親しみやすい語り口ながら、気をつけなくてはいけないポイントや見落としがちな点はバシッと指摘。独学で問題を解くだけでは圧倒的に不足する事例の量を、動画を見ることで補うことができました。試験勉強の早い段階で、この動画シリーズの存在に気付けたのは、ほぼ独学の自分にとって本当に大きかったです。

ともかく、7月前半は実技漬けの毎日を過ごしてました。そう言えば、試験の申込みをしたのもこの頃でしたね。

後編へ続く…。

前回の話はこちら。

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プロフィール

気象予報士。ほぼ独学で第55回気象予報士試験に合格。新潟県上越市出身。川崎フロンターレのサポーターで、全国各地へのサッカー観戦やご当地グルメの食べ歩き、温泉めぐりが趣味(現在自粛中)。好きな季節は春、好きな雲は積雲。SEから気象に関する仕事への転職に向けて準備中。

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