気象予報士試験 合格までの軌跡(3/4)…1回目の受験、第54回試験(後編)

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2020年7月中旬:学科の問題集の着手と弱点の可視化

7月も後半になって、「気象予報士試験 精選問題集」を購入し、学科の過去問にもようやく着手。試験本番の1ヶ月ちょっと前にようやく学科の問題を解き始めるというのも、今考えるとどうかしてましたね…。

「精選問題集」はその名の通り、過去問から分野ごとに代表的な問題をピックアップして取り上げた本で、試験の全分野を手っ取り早く解くことができるありがたい問題集。奇問や類似問題を排除しているので、問題のクオリティが確保されているのもメリットです。自分はこの本で、苦手分野の洗い出しに取り掛かりました。

問題を解くにあたって、ただ単に採点して正解か不正解かで一喜一憂するのではなく、各問題に3~5個ある選択肢の内容を一つ一つ詳しく確認して、間違った箇所や偶然合っていたけど知識があやふやな箇所を洗い出して、正解に至る考え方を理解するように心がけてました。

ノートに書いた解答を採点するときは、間違った問題の解説は赤ペンで書き、あやふやだった問題の解説は青ペンで書くことで、自分の弱点がノートに可視化され、ひとつひとつ潰しやすくなり、あとで見返すことで自分だけの参考書となっていきました。これは試験前日まで役に立ち、試験当日も自分の心強い相棒となりました。

気象業務法などの法律問題も、この段階で初挑戦。「イラスト図解」では全く記載されていない分野なので、当然知識もほぼゼロ。しかしSE時代に受験した情報処理技術者試験にも法律問題が出ていて、勉強法はなんとなく分かっていたので、「知識がない状態でいきなり問題を解いてから、解説を読み込んで理由も含めて覚える」というやり方で、徐々に慣れていきました。

7月下旬:問題集を解いて初めて勉強内容の抜け落ちに気付く

こうして、学科一般と学科専門合わせて、1週間ほどで学科2科目の問題は一通り解いたものの、ここで勉強法に関する重大な勘違いが発覚。学科専門の勉強は、ほぼ「イラスト図解」1冊に頼っていたので、専門分野は観測や予報の手法に関する問題ばかりで、てっきり気象現象については問われないとばかり思ってました。しかし実際は天気予報の分野の中で、学科一般よりも高度な気象現象に関する問題が出題されることを、過去問を解くことで初めて知ったのです。…遅いわ!

…よくよく考えてみると、これまで自分は「気象学」は勉強したものの、「天気」についての知識や理解が不足していることに思い至りました。そこで7月下旬に、こちらも定番の「新・百万人の天気教室」を購入。気象学の理論だけではなく、実際の気象現象のしくみや、学科専門や実技の分野の内容も幅広くカバーしていて、通して読むと知識の抜け漏れがかなり少なくなりました。

その後、講談社ブルーバックスの「図解 気象学入門」も買いました。こちらは数式を極力使わず、ほとんど中学校までの理科の知識のみで、気象学や気象現象を分かりやすく定性的に解説している凄い本。著者は元気象庁予報課長と理科の教科書の元編纂者と聞いて納得。300ページ弱なのに1080円とコスパも魅力的です。試験勉強を始めるときに、一番最初にこのブルーバックス本を読んでから、数式が使われている他の参考書を読んでいたら、理解度も段違いだったはず…。もっともこの本も、数式が使われていないだけで内容は気象学そのものなので、理解しながら読み進めるのは結構大変なことに変わりないんですけどね。

8月上旬:模擬試験で岐路に立たされる

勉強の内容を軌道修正しつつ、7月末から8月上旬は「精選問題集」の実技問題を、1日1問のペースで解いてました。1ヶ月前の実技対策では、どんなに時間が掛かっても全問解くことを優先していたのですが、今回は途中から時間を計り始め、本試験と同様に75分で解くことも目標に加えました。

ここで直面したのは解答スピードの遅さ。まだ答案としてアウトプットすることに慣れていないため、すべての問題を解くのに80分以上かかることもありました。そこで、小問を1つ解くたびに経過時間をメモしておき、終了後にどの問題で時間が掛かったかを検証。すっと答えが思い浮かばなかった論述問題や、苦手な速度計算の問題で、タイムロスが大きかったですね。

また、実技問題を解いても論述問題の言葉の過不足や不正解もまだ多くて、自分が書いた答案のどこが良くないのかに気付かないことすらありました。今にして思えば、まだ気象現象の理解力も答案への表現力も足りてなくて、限られた文字数の中で必須となるキーワードを抑えることができていなかったのだと思います。

この頃は解答時間よりも答え合わせの時間の方が長くなってしまい、時には倍近く時間が掛かることも。問題を解くのは楽しいんですが、答え合わせで自分の拙い解答と向き合う時間は、正直結構しんどかったです。

そんな中、試験2週間前に、Team Sabotenの模擬試験を受講。コロナ禍ということで、模試は自宅に郵送で届き、模試当日に受験者が一斉に解いてから、模擬試験の解説をリモートで受講するという流れ。模試の問題は本試験と同じかそれ以上の分量と難易度で、値段は高いもののクオリティも高く、価値は十分にあると感じました。

ただ自分は、この分量の多さと難易度の高さにすっかり打ちのめされることに。このままでは学科と実技が共倒れになりかねない。そう考えて、残り2週間は実技を捨てて、学科2科目の合格ラインを確実に突破する方針に転換しました。

8月中旬:試験直前、再び学科対策に集中

学科試験の勉強に戻ってまず取り組んだのが、「精選問題集」で間違えた問題のみもう一度解き直したこと。その後過去12回分の過去問を解いて、間違えた問題やあやふやな問題の考え方を理解することを徹底しました。過去問の点数は、一般も専門も毎回ボーダーライン前後の9~13点を行ったり来たりで、知識の穴が潰し切れていないことを痛感。でもネットに転がっている解説を読みながら、試験前日まで地道にやり続けました。

法律問題も、過去10回分以上の問題を試験直前のこの期間にまとめて解くことで、試験で問われるポイントを力技で把握。暗記モノは試験直前に対策して短期記憶で乗り切ろうという作戦です。これも情報処理試験での法律問題対策と同じ。まさかこんなところで経験が生きるとは…。

ただ一発合格への望みも断ち切れず、試験の前々日と前日には、実技試験のスピード感とボリューム感を身体に刻みつけるため、52回と53回の実技試験を2問ずつ解いてました。

試験直前には、「気象予報士かんたん合格ノート」を購入。この本は元受験生の気象予報士の方が、受験生の目線に立って試験のポイントや細かいノウハウを記載したもので、内容は若干古いものの、問題を解く上での手法や心構え、天気記号の覚え方や論述問題のキーワードのまとめ、前日や当日の過ごし方など、他の参考書とは一線を画す実践的な内容ですごく役に立ちました。

2020年8月23日:1回目の試験、第54回試験当日

自分は東京会場のうち、吉祥寺の成蹊大学で受験。検温に時間が掛かることを想定して、少し早めに到着すると、案の定検温には長蛇の列。しかし列はスムーズに動き、大きな混乱もありませんでした。少し前に行われた英検では、入場に時間が掛かり過ぎて試験開始に間に合わない人が続出したというニュースを見ていただけに、心底ホッとしました。

この日は朝から夕方まで試験があって長丁場だったので、試験と試験の合間には、試験直前の最終見直しよりも、とにかく少しでも身体をほぐして脳を休ませて心身ともにリラックスさせることに注力。集中状態なんて長時間続かないですし、長時間座っていると身体中の筋肉がこわばって疲労を感じやすくなってしまいます。昔の大学入試の2次試験(1教科150分!)や情報処理試験(朝から夕方まで)の経験が、ここでもまた役に立ちました。

実際の試験は、午前中の学科一般・学科専門ともに、直前対策が功を奏して、自信を持って解答することができました。一方実技試験は、実技1の速度計算で痛恨のタイムロス。それが尾を引いて最後まで解答できず。最後は計算が面倒なだけで難しくはない雪水比問題だっただけに、時間の余裕がある状態で解きたかったですね。あと3分あれば…!実技2は時間内に最後まで解答できていただけに、なおさら悔しかったです。

後日実施した自己採点では、学科一般が14/15、学科専門が11/15でした。思っていた以上に専門がギリギリだったものの、どちらもボーダーラインはクリアしてそうでまずは一安心。一方で実技は、点数はつけていないものの、解答速報を見てこりゃダメだと悟りました。

2020年10月2日:第54回試験結果発表

・学科一般:合格
・学科専門:合格
・実技:不合格

結果は自己採点の通りとなりました。さすがに一発合格は無理でしたが、これで次回の学科試験は2科目とも免除が決定。狙い通りの結果になりました。

そして、2回目の試験勉強に取り掛かるのですが…

1回目の試験勉強の前編はこちら。

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プロフィール

気象予報士。ほぼ独学で第55回気象予報士試験に合格。新潟県上越市出身。川崎フロンターレのサポーターで、全国各地へのサッカー観戦やご当地グルメの食べ歩き、温泉めぐりが趣味(現在自粛中)。好きな季節は春、好きな雲は積雲。SEから気象に関する仕事への転職に向けて準備中。

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